休む勇気

 新宿の高島屋タイムズスクエアの入り口で、傘をたたむ夫婦の後姿に目を疑いました。私の両親でした。別に生き別れていたわけじゃなく、たまたま十数日ぶりに会っただけのことです。ですが、今日ここで待ち合わせをしていたわけではないので、やはり驚きました。それで、声をかけたらあちらも、あら、なんて驚いて、ランチをしようと話がまとまって、じゃあ後でと約束して一旦別れました。

 もう時期梅雨だし、肌のこととか、食べもののこととか色々気になって、ひとつデパートにいって教わって、旬のものを仕入れようと、化粧品売り場と生鮮食品売り場を歩いて話を聞いたりしてから、再び両親に会って、食事をしました。

 予定では、東京メトロの副都心線あたりを歩くつもりで、デパートを出たらすぐに行こうと思っていました。けれども、2人の顔を見たら話したいことや聴きたいことが溢れてきて、あちらもあちらで偶然会えたことにいたく運命を感じたらしく、それじゃあお互いに再会を祝してということで、予定に蓋をしてあれこれと語り合いました。

 外はあいにくの雨模様です。こんな日には歩くのを休むことも必要だと、ものの本にもありました。今日は、そんなわけで2285歩。このところ、1万歩ペースだっただけに悔しいですが、無理せず、家族とのんびり過ごせて、それはそれで、なんだか満足のいく一日でした。

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神楽坂駅 歩いて帰って何歩

 神楽坂の毘沙門様の前で、露地から出てきたスーツ姿の男性が2人、ハタハタと柏手を打ちました。

 女性なら恋愛、年寄りなら健康、学生なら学業と、あれこれ対になることに思いめぐらせて、さて、中年男性が2人で毘沙門様に何を拝むのだろうかと考えます。随分と神妙な様子で手を合わせているし、健康かな?意外に学業?まさか、恋愛…?!いやいや、ここは仕事あたりにしておきましょう。

 坂の途中のKIMURAYAで、一個300円のメキシコ産マンゴーを買って、ぶらぶら歩きながら家まで帰りました。

着いて万歩計を見ると、13707歩。よしよし、今日はよく歩いたぞ、なんて思いながらマンゴーの皮に刃を当ててスルスルと剥いていきます。果肉は細かく刻んでプレーンヨーグルトと混ぜてからタッパーに入れ、冷蔵庫に仕舞いました。一晩寝かせたフルーツヨーグルトは、味が馴染んで格別です。つまみ食いは我慢して、スプーンのヨーグルトを一舐めしてから、食事の用意にかかりました。

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【千鳥ヶ淵】2000歩の感覚

 歩いていく先に五味坂があります。下れば内堀通り、そして千鳥ヶ淵緑道。道に落ちているのは山桜の実。乾燥して硬くなり、干しブドウのようにシワシワとしています。雀が飛んできて啄みました。美味しいかしら。窪みにたまった水をなめる野良猫。野良猫を構う男性。犬を散歩させる女性。その傍で雑草を刈る清掃員。取り払われたあとに順序よく植わる龍の髭が涼しげです。

 緑道が切れて九段坂からやがて九段下駅の入り口へ。九段下駅の男坂と命名している2番口の階段を下り、東西線の改札口に着きました。万歩計は2292歩です。感覚では数百歩ほどでしたから、今日はさらりと歩けた、そんな2千歩です。

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九段下駅 一駅分

 自宅と職場の往復で、何歩あるか計ってみました。

 結果は、8184歩。あと2千歩で1万歩です。

その2千歩どう稼ぐか。帰りも行きと同じように九段下から一駅分歩いてみる。けれども毎日体力があるとは限りません。

 それでも1万歩まであと少しと分かると、歩きたい気持ちが沸々と。階段を使ったり遠回りしてみたりすれば、なんとか。最短距離より無駄に歩いて、1万歩に届かせたいものです。

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皇居内堀外周11169歩

 万歩計で、皇居の内堀外周が何歩あるか計ってみることにしました。

 起点は、半蔵門。時計と逆回りに、三宅坂から桜田濠、凱旋濠、日比谷濠。馬場先濠から和田倉濠、桔梗濠、大手濠と続き、清水濠、牛ヶ淵、千鳥ヶ淵そして半蔵濠まで。内堀を左に見ながら歩きます。

 外周上には、概ね濠に対して1つ、地下鉄の入り口があります。これを見て歩くのも、目先が変わり、歩く目安にもなって便利です。

桜田濠と凱旋濠の間に桜田門駅。日比谷濠には有楽町駅と日比谷駅。馬場先濠に、二重橋前駅と日比谷駅。さらに大手町駅と二重橋前駅の入り口も。和田倉濠には大手町駅。大手濠に竹橋駅。牛ヶ淵には九段下駅があります。

 多少の寄り道が含まれるため、必ずしも正確な数字とは言えませんが、歩数は11169歩でした。

 このコースで、少なくとも1万歩は稼げることが分かりました。ちなみに距離はおよそ6キロメートル、ゆっくり歩いて2~3時間くらいで「完歩」できます。

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半蔵門駅 悲しきシメイ

  早稲田通りのスーパーで、完熟トマト、国産のオクラ、紫蘇はこだわりなく、ザーサイはピリ辛のもの、北海道産大豆のお豆腐、さっとお皿に盛りつけて見栄えのしそうな鯵の刺身を買ってから、地下鉄の入り口をくぐりました。

半蔵門線の半蔵門駅を上がって、酒屋でベルギーのシメイトラピストビール(ブルー)、ドイツのヘフェ・ヴァイストビア、黒部原泉水を買いました。

一旦荷物を置いてから銭湯に向かい、さっぱりして自宅に戻ると、掃除機がけ、トイレ掃除、洗面台を拭き終えて料理にかかります。

 トマトとザーサイを細かく切り、オクラは輪切りにします。それらを混ぜ合わせ、粘りのでたところを八つ切りした豆腐の上にかけます。胡麻油を少量たらし香りを付けて、一品目が完成。つぎに白くて四角い皿に紫蘇を三枚敷いて、鯵の刺身を盛りつけます。白胡麻をかけて醤油をたらし二品目も完成しました。

 ベルギーとドイツどっちがいいなんて、空腹を前にどうでもいいことを考えて、じゃ、ベルギーでと、栓を抜いた途端に噴き出す泡。辺りはビールの海。がっくり雑巾がけする横にシメイの瓶。半分になったビールを、チビリチビリといただきました。

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銀座駅 傘いらず

 雲行きはあやしく、とうとうポツリポツリ降ってきました。

雨宿りがてら、早いお昼を恵比寿駅前のスターバックスコーヒーでとり、ついでに一時間ほど読書して、ほとぼりが冷めたのを見計らって店をでました。着くころには止んでいるだろうと、日比谷線で銀座駅まで行き長い地下道をくぐって上ったところ、ザーっとひどい雨です。

 伊東屋まで走って行ってひさしの下に滑り込み、ずぶ濡れは免れました。5階でカレンダーを、3階で画鋲と糊、それにシールを買って再び出入り口に立つと、これがなかなかの本降りです。すぐそこに、500円くらいの洒落たビニール傘が売っていました。どうしよう、もし止んだらもったいないしなぁとしばらく考えましたが、服は乾かせば済むことだし、ええぃままよと、向かいの銀座教文館に走りました。

 グレーのパーカーは水玉模様です。それでもなんとか体裁を整えて、今日で終わりの「まどさん100歳」展を観に9階へと向かいました。

「ぞうさん」「やぎさん ゆうびん」「一ねんせいになったら」「ふしぎな ポケット」などで知られるまど・みちおさんは詩人ですが、絵も非常に達者です。ということを、何年か前の朝日新聞で知って、いつか見たいと思っていました。

それにしても、「ぞう」の絵における象の描き方。なにかガスタンクか人工衛星か、プラネタリウムみたいです。まっすぐに伸びた鼻の先の花。背景と象は緑色で、花だけ赤色です。丸と直線、赤と緑で構成された絵は、温かみと張り詰めた感じのある抽象画でした。

陳列品に光村図書の小学二年生用教科書『たんぽぽ』を見つけました。巻頭の詩を紹介しています。二十数年前にこの教科書のこの詩を、音読したことを覚えています。そう言えば当時、教科書の汚れをいかに落とすかということが、クラスで流行っていました。この『たんぽぽ』を使い男の子達と表紙の消しゴムかけに熱中しました。授業中も夢中でやり(先生に怒られましたが)甲斐あって、きれいだなんて褒められたりして、喜んでいました。

ひとしきり、グッズコーナーで書籍など見て、最近の著書『いわずにおれない』を買い、その後は階下をひやかして出口まで行くと、相変わらずの雨。

仕方なく、パンの木村屋近くのメトロ入り口まで走って、なんとか傘を買わずに済ませました。

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麹町駅 トマトベースのパスタ

 半蔵門線の半蔵門駅と有楽町線の麹町駅は、地上を歩いて3分ほどの位置関係です。

 午後にMさんが遊びに来ました。話すうち、護国寺へ引っ越したことが分かり、それならば麹町駅を案内すればよかったと、後悔。

すると、護国寺から歩いてきたから問題ないよとサラリ(この雨の中をですか)。寄り道しながら飯田橋経由でだいたい1時間半だったと、神楽坂の五十番で買った中華まんの袋を手渡してくれました。

 まずは、ボタニカルズのハーブティと持参のお菓子をいただいて、ランチの用意。メニューは、トマトベースのパスタ(独逸屋ロースハムと佐賀県産新たまねぎ入り)、ikariのコーンクリームスープ、サントリーのプレミアムソーダ(山崎の天然水でつくったソーダ)。パスタはねらいより薄味で、具に対して麺の量が多かったことによるもの。美味しいよ言ってもらい、ちょっと安心しましたが、次回はもう少し調整したいところです。

 大学院時代、職場、新生活でのあれこれから、皇居周辺の散歩、青梅の山登り、水戸線乗車、護国寺の行列のできる和菓子屋群林堂の豆大福、半蔵門の皇居ランナー御用達の銭湯バン・ドゥーシュ、扇橋好きからお互い知るところのH先生が語った『ま・く・ら』まで、尽きなく話しました。

 麹町駅まで見送りに行ったところ、これから永田町まで歩くとのこと(この雨の中をですか)。風邪ひかないようにと、思いつつ別れました。

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池袋駅 寝かせる

 大学の恩師の三回忌に、有楽町線の池袋駅で乗り換えて東武東上線の小川町駅から、越生に向かいました。

先生は厳しい人でした。下手に質問したら「そんなことも分からんのか」と言われそうで、言い出せない。眼光鋭く、あれに睨まれて梁から猫が下りてこられなかったという逸話がある人です。

入門するまではやさしいけれど、どのタイミングか弟子になったなと、分かった頃から怖くなりました。口をきいてもらえなくなるのです。

それからは、どのくらい後ろから付いて歩けばいいとか、どのタイミングでモノをすっと出せばいいとか、考えたり図ったり、段々こんがらかって、だいぶ失敗しました。それにめげて、しばらく寄りつかなくなったことがあります。そうすると、「あいつは、どうしてるんだ」と先輩を通じて聞こえてきて、重い腰を上げてまた通う、そんなことを繰り返していました。

いま思えば、もっと体当たりで、挑んでおけばよかったと思います。あれこれ考えずに「先生、分かりません。教えてください」「バカ、そんなことも分からんのか」「はい、すみません。お願いします」こういう円滑なやりとりがあってよかった。バカだったなぁと思います。

 いつだったか、新校舎が建ってすぐに、研究室へおじゃましたことがありました。先生は、ブラインドを上げて「どうだ、日本のへそが見えるだろう」と、国会議事堂を差して言うので、そのときは「そうですね」と返事したと思います。たとえそう思わなくても、そうですねは半ば口癖ですから、そう返事したはずです。

このやりとりが、妙に頭に残っている。なぜだろうと。それは、よく分かりません。おそらく、先生がいままで真剣になって研究してきたことを、突き放して言ったように感じたからだろうと思います。他の人が聴いたら、ちょっと洒落たことを言ったくらいのことでしょうが。

日本のへそは間近に見えるのに、(研究分野の)中央へ自分の想いが届くには距離があるなと。

その1年後に癌が見つかりました。

 最期にお会いしたのは、亡くなる7日前です。新宿の小田急デパートで、先生の好物のマンゴーを買って、お宅に伺いました。そしたら、先に来ていた姉弟子2人もマンゴーを持参していて、あれ、なんて言いながら笑いました。その1週間後です。

 三回忌まで、あっという間だった気がします。いろんな思い出がありますが、振り返れば「日本のへそ」です。あと何年か寝かせたら、どんなことが思い出されるか、お酒のようで少し楽しみでもあります。

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【和田倉濠】コブハクチョウ

 皇居外苑を形作る6つのお濠のひとつ、和田倉濠にコブハクチョウが泳いでいることがあります。本当はいけないんでしょうが、土手に外国人旅行客が寝そべって、たまに餌なんかをあげたりしています。コブハクチョウは、くれるというものを断るはずありません。優雅に近寄り、パクリパクリとして、何事もなかったように、またゆらゆら去っていきます。

 仲間のハクチョウを大手濠で見かけることがあります。縄張りがあるのかどうか分かりませんが、彼もたまに来て、こちらでご飯をもらったりしてるのでしょうか。そもそも、いつも何を食べて生活しているのか、気になりますが、しょっちゅう会う訳でもないので、彼らは彼らなりに、このお濠でうまく生活できているのだと思います。

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